2000.5.31       とんでもない日曜日

前回からの続きで「コンピュータいまむかし」のその2を書くつもりだったが、5月28日があまりにとんでもない1日だったので、ことの顛末を書くことにした。
毎年5月4週目の日曜日は、ママさんバレーの鎌倉市の大会が開催される。
その日、私がピアノを習っている、ヤマハ音楽教室の発表会が行われることになった。
大人の部は夕方からだというし、鎌倉中央公民館で弾くのは久しぶりなので、 申し込んでしまった。
弾くのはショパンのエチュード「別れの曲」。
たった4ページの曲とはいえ、ショパンだけあってさすがに難しい。
それでもできるだけ毎日30分でも練習するようにした。
ところが今年に限って、全国家庭婦人バレーボール大会の予選が同じ5月28日に開催されることになってしまった。
この大会で、昨年我チームは優勝して県大会に進み、1回戦であえなく敗退した。
「夢よ、もう1度」というわけで鎌倉市の大会は棄権して、全国家庭婦人の方に出場することになってしまった。
我チームは、人数がぎりぎりしかいないので、休むといいにくい。
この3月に、若手が1人引っ越したばかりで、なおさら休みにくい。

そうこうするうちに、ゴールデンウィークも過ぎ、1週間前になってやっと試合の組み合わせが決まった。
悪いことに我チームはシードされていて1回戦がなく、4試合目に1試合目の勝者と戦うということになってしまった。
それでは初めて試合をするのが、お昼頃になってしまう。
ピアノの方は4時15分集合、4時半開演で、私は3番目に弾くことになっていた。
これはかなりまずい。
そんなわけで、バレーの最後の練習の時に、とにかく1試合だけ出て、もし勝っても帰らせてもらうようにした。
ママさんバレーは9人制で、1チーム12人ということになっている。
その時点ではメンバーは11人いた。

そして5月28日になった。
試合に行くため、腰越中学校の前に集合してみると、なんとキャプテンが体調が悪くて欠席だという。
これで、私が抜けると9人しかいないわけだ。
万一、怪我人が出たら、棄権するしかない。
とにかく試合は始まった。
ところが今日に限ってと言うか、運が悪いというか、いきなり1試合目から3セットの試合、それも 特別長い試合で、9時10分に始まって、終わったのが10時半。
続く2試合目もなんと3セット。
それが終わった時点ですでにお昼近くなってしまった。
次の試合が3セットになるようだったら、もはや万事休す、何もしないで帰るしかない。
幸いそれは2セットで終わり、12時45分ごろから、やっと私達の試合が始まった。
いつもは立ち上がりの悪いチームで、もたもたすることが多いのだが、今日は最初から、 快調に飛ばして、2−0で勝ってしまった。
終わったのがぴったり1時半。
藤沢にある明治小学校というところで試合をしていたのだが、その前を通って、藤沢に出るバスが1時間に1本しかなくて、1時48分というバスに乗れそうだ。
慌てて着替えていたら、チームの人のご主人が車で送ってくださるというので、藤沢本町まで送っていただいた。

私の予定ではうちに帰ってシャワーを浴びて、着替えて、1,2回練習してから、会場に向かうつもりだった。
藤沢本町の駅で、何気なくGパンのポケットにいれた自宅の鍵を探した。
その瞬間、・・・時間が止まった!
手に触れるものが何もない!!
身体中にかいていた汗が冷た〜くなった。
慌ててバッグの中や、ポケットの中を探ってみるがない。
そのうち小田急線が来てしまったので、とにかく乗って藤沢で降りた。
駅のベンチで、バッグの中身を全部出して探したが、やはりどこにもない。
Gパンを脱いだ時に体育館で落としたか、朝、うちを出る時にまだ主人がいたので鍵を置いてきてしまったか、どちらかだ。
いずれにしろ、うちに帰っても家の中に入れないわけで、主人は出かけていて、夜まで帰ってこない。
主人は携帯電話を持っているが、買ったばかりの私のPHSには主人の番号をいれてなかった。
やむを得ず、電話番号のわかっているKさんに電話をして、主人がいつも行っている人のうちの電話番号を調べてもらい電話をかけたが、奥さんに聞いたら、山の中に入っていて夕方まで帰らないし、携帯の番号は知らないと言われた。
Kさんに頼んで、洋服を借りようとも思ったが、どう考えても体型的に無理である。
いつも試合の時は財布の中にはお金を少ししか入れていかないのだが、虫のしらせか今日に限ってまとまったお金を持っていた。
発表会のあと、Kさんと食事をするつもりだったからだ。
無論クレジットカードも持ってないし、あるのは財布と定期と消えてしまった鍵のほかには、汗臭いユニフォームとお昼のお弁当の残りのお稲荷さんだけ。
そこで覚悟は決まった。
とにかくGパンとTシャツにスニーカーではどうにもならない。
4時に鎌倉まで行けば間に合うので、まだ1時間ほどある。
さいか屋に行って洋服を見ていたら、発表会でも着られそうで、私にも入りそうな服があった。
値段をみると、かなりぎりぎりの線だ。
売り場の店員さんに事情を話したら、少しまけてくれた。
そして7階で靴のバーゲンをやっているというので、そこで靴を買って、暗譜ができてないので楽器屋さんで楽譜を買った。
もちろん1曲だけのピースの楽譜だ。
そして江ノ電で鎌倉まで行って、ストッキングを買ってから、公民館に入った。

東洋の魔女? ・・・・・≫ 馬子にも衣裳だ〜!

シャワーもなにもあったものではない。
時間ぎりぎりになったので、トイレに入って顔だけ洗って、汗臭いのは目(いや、鼻)をつぶって着替えようとして、Gパンのポケットのあたりに触れたら、何やら硬いものがある。
慌ててさぐってみると、あろうことかポケットの底ではなくて、お腹の方の隙間に鍵が入っていた。
なんともったいない!
しかしいまさらどうしようもないので、とにかく着替えて、Kさんが貸してくれたペンダントをつけて本番。
緊張する暇も、あがる暇もなく、私の出番は終わってしまった。
普段の楽譜ではない上に、ピースの楽譜は紙が硬くて、めくる時に失敗した。
そして、いつも間違えて自信のなかったところで案の上間違えた。
弾きなおすわけにもいかず、何とか最後まで弾いた。
でも時間に余裕があったら、もっと間違ったかもしれない。
いつものレッスンで先生の前で弾くより、よほど緊張しなかった。
hanataba.jpg 全部終わってから、Kさんにもらった素敵なバラの花束を持って、写真を撮った。
そして小町通のレストランで、ワインで祝杯(?)をあげて、おいしいフランス料理を食べて大笑いした。
もちろん私の財布には1000円くらいしか残ってなかったので、Kさんのカードで払ってもらい、借金のおまけつき。
たった5分の演奏のために参加費9500円+衣装代で、ウン万円かかってしまった。
1日で3日分くらい生きた気がする日曜日だった。
ちなみに、バレーの方は次の試合で負けてしまい、県大会の夢は はかなく消えてしまった。